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19条裁判判決(要旨)

19条裁判東京地裁判決(要旨)

平成28年(行ウ)第316号 非認定処分取消請求事件

口頭弁論終結日 令和元年9月5日

令和元年12月16日 判決言渡

 当事者等

 原告 学校法人平成医療学園

 被告 国

 主文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

○ 請求

 厚生労働大臣が平成28年2月5日付けで原告に対してした、原告の横浜医療専門学校に係るあん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師の養成施設の認定の申請については、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律附則19条1項により認定をしない旨の処分を取り消す。

○ 事案の概要

1 事案の骨子

 原告が、原告の運営する医療専門学校について、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(以下「あはき師法」2条2項に基づき、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師養成施設の設置の認定の申請をしたところ、厚生労働大臣が、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があるとして、同法附則19条1項に基づき、上記認定をしない旨の処分をしたため、原告において、同項が憲法22条1項(職業選択の自由)、31条(適正手続の保障)等に違反して無効であるなどとして、同処分の取消しを求める事案。

2 あはき師法の定め・・・別紙のとおり(注:巻末に掲載)

3 事実経過

(1) 原告は、平成27年9月29日付けで、厚生労働大臣に対し、あはき師法2条2項に基づき、原告の運営する横浜医療寺門学校について、あん摩マッサージ指圧師養成施設の認定の申請(以下「本件申請」)をした。本件申請は、修業年限が4年で、入学定員を30名とする視覚障害者以外の者を対象としたあん摩マッサージ指圧絨灸師科(昼間)を平成28年4月1日付けで新たに設置することを予定するものであった。

(2) 厚生労働大臣が、医道審議会に対し、本件申請について、あはき師法附則19条1項の規定により認定しないことについて、意見を求めたところ、医道審議会は、同項の規定に鑑み、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認められることから、認定すべきではないとする答申をした。

(3) 厚生労働大臣は、平成28年2月5日付けで、原告に対し、本件申請については、あはき師法附則19条1項により認定をしない旨の処分(以下「本件処分」)をした。

(4) 原告は、平成28年7月15日、本件訴えを提起した。

○ 争点

1 あはき師法附則19条1項の憲法22条1項適合性(争点1)

2 あはき師法附則19条1項の憲法31条、13条適合性(争点2)

3 あはき師法附則19条1項を本件申請に適用することが憲法22条1項、31条、13条、14条1項に違反するか(争点3)

○ 当裁判所の判断の要旨

1 争点1(あはき師法附則19条1項の憲法22条1項適合性)について

(1) 判断の枠組み

 あはき師法附則19条1項は、視覚障害者の従事できる職種が限られ、従来からその多くがあん摩マッサージ指圧師の業務に従事してきたことから、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、その生計の維持が著しく困難とならないようにすることで、視覚障害者を社会政策上保護することを目的とするものであり、そのための手段として、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の設置及び定員の増加について一種の許可制を採用するものである。

 一般に許可制は、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する(最高裁薬事法判決)。他方で、憲法は、社会経済政策上の積極的な目的のためにする個人の経済活動に対する法的規制措置を許容しており、かかる措置については、立法府の政策的・技術的な判断に委ねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ない(最高裁小売市場判決)。

 したがって、あはき師法附則19条1項による、視覚障害者以外のものを対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等を設置しようとする者及びあん摩マッサージ指圧師の資格を取得しようとする視覚障害者以外の者の職業選択の自由に対する規制については、それが重要な公益のために必要かつ合理的な措置であることについての立法府の判断が、その政策的・技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理である場合に限り、憲法22条1項に違反するものと解するのが相当である。

(2) 立法目的について

ア 昭和39年のあはき師法改正による附則19条1項の制定経緯からすれば、同項は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先することを専らの目的として制定されたものというべきであり、同項にいう「当分の間」も、視覚障害者に関し、あん摩マッサージ指圧師以外の適職が見出されるか、又は視覚障害者に対する所得保障等の福祉対策が十分に行われることにより、視覚障害者がその生計の維持をあん摩関係業務に依存する必要がなくなるまでの間を意味するものと解するのが相当である。

イ 昭和39年当時と現在とを比較すると、障害者に対する年金制度(障害年金)が拡充されるなど障害者の福祉等に関する法制度が更に整備され、パソコン等のICT技術の普及により、視覚障害者には、事務的職業等の職業選択の道が開かれるようになるなど、視覚障害者をめぐる社会事情は変化してきている。

  しかしながら、視覚障害者の就業率が現在でも低水準となっており(平成18年で21.4%)、就業者の中ではあん摩・マッサージ・はり・きゅう関係業務に就いている者の割合がなお高い状況にあり(平成18年で29.6%)、重度の視覚障害のある有職者に至っては、7割を超える者があん摩・マッサージ・はり・きゆう関係業務に就いていること、視覚障害のある新卒者のうちの相当数(平成28年で355名)があん摩マッサージ指圧師国家試験の受験をしていることからすれば、視覚障害者におけるあん摩マッサージ指圧師業の重要度が特別な保護を必要としない程度にまで低下したとみることは相当ではない。

  また、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の年収も平成25年時点で300万円以下の者が約76%を占めていること、障害年金は必ずしも視覚障害者全員が受給できるものではなく、平成14年時点では視覚障害者であるあん摩マッサージ・はり・きゅう業者のうち約半数が公的年金を受給していなかったことからすれば、障害年金制度の拡充等によっても、視覚障害者の生計が更に特別な保護を必要としない程度にまで改善されたとみることは相当ではない。

  したがって、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、その生計の維持が著しく困難とならないようにするというあはき師法附則19条1項の目的の正当性が、現在において失われたと認めることはできない。

(3) 規制の必要性及び合理性

ア 規制の内容及び規制の程度

  あはき師法附則19条1項は、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等を設置しようとする者の職業選択の自由を制約するものであるが、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認められる場面に限っての規制であるから、規制の必要性に係る厚生労働大臣等の判断が適正に行われている限り、その制限は限定的である。

  また、あはき師法附則19条1項は、上記の養成施設等の設置等がされないことにより、当該養成施設等においてあん摩マッサージ指圧師の資格を取得するために必要な知識及び技能を修得する機会が制限されるという意味において、その資格を取得しようとする視覚障害者以外の者の職業選択の自由を制約しているものであるが、視覚障害者以外の者は、現に設置されている養成施設等に通うことによりその取得が可能となることからすれば、その制約は限定的である。

イ 規制の必要性

  視覚障害者は、その障害のため、事実上及び法律上、従事できる職種が限られ、転業することも容易ではないところ、前記のとおり、現在においても、あん摩マッサージ指圧師業に依存している状況にある。

  他方で、視覚障害者以外のあん摩マッサージ指圧師は、昭和39年頃より増加し、その収入も、平成25年時点であん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の年間収入が平均636万2000円と、視覚障害者の290万円を大幅に上回っており、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設の受験者数も、平成27年度において定員を大幅に上回っている状況にある。また、あはき師法附則19条1項に相当する規定のない隣接業種(はり師、きゅう師及び柔道整復師)においては、柔道整復師養成施設の指定をしない処分を違法として取り消す旨の福岡地裁判決があった平成10年度以降、大幅に養成施設等の施設数及び定員が増加している。

  これらのことからすれば、あはき師法附則19条1項による制限がなくなれば、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の数及び定員が急激に増加し、視覚障害者以外のあん摩マッサージ指圧師の数も急激に増加することが想定されるのであって、このような急激な増加は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の業務を圧迫することになるから、現在においても、同項による規制の必要性の存在を認めることができる。

ウ 規制手段の合理性

  上記のとおりの目的を達成するために必要な上記規制の手段として、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認められる場合に限り、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の設置の認定及び定員増加の承認をしないことができるという手段を採用することは、それ自体合理的なものである。

  そして、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため規制が必要か否かの判断において勘案すべき事情として、あん摩マッサージ指圧師の総数及びあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合を挙げることには合理的な関連性が認められるし、その判断は、その時々における上記割合のほか、視覚障害者の総数、雇用状況及び医療の状況、社会におけるあん摩マッサージ指圧師に対する需要等の様々な事情に左右されるものであり、その要件や勘案すべき事情を立法者においてあらかじめ詳細に規定することが困難な性質のものであるから、その判断を上記割合のほか諸般の事情に基づく厚生労働大臣等の専門的・技術的な裁量に委ねることとすることも不合理とはいえない。

  さらに、あはき師法附則19条2項は、厚生労働大臣等は、同条1項の規定により認定又は承認をしない処分をしようとするときは、あらかじめ学識経験等を有する委員により構成される医道審議会の意見を聴かなければならないとしており、その委員の構成や議事の運営が適正なものである限り、処分の適正さを担保するための方策として合理的である。

  以上によれば、あはき師法附則19条1項による規制には、手段としての合理性が認められる。

(4) 以上を総合的に考慮すると、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、その生計の維持が著しく困難とならないようにすることを重要な公益と認め、その目的のために必要かつ合理的な措置としてあはき師法附則19条1項を定め、これを今なお維持している立法府の判断が、その政策的・技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であるとはいえないから、あはき師法附則19条1項は、憲法22条1項に違反するということはできない。

2 争点2(あはき師法附則19条1項の憲法31条、13条適合性)について

 原告は、あはき師法附則19条1項の規定は、認定等をしない処分の要件・基準が曖昧不明確であるため、憲法31条、13条に違反する旨主張するが、同項については、前記1(3)ウのとおり、処分の要件や勘案すべき事情をあらかじめ詳細に規定することができない立法技術上の制約があり、そのような制約がある中でも、重要な勘案事情を例示するなどして、厚生労働大臣等の裁量判断が恣意に流れないようにする配慮がされていることからすれば、同項の規定が、処分要件等の曖昧不明確さゆえに憲法31条、13条に違反するということはできない。

3 争点3(あはき師法附則19条1項を本件申請に適用することが憲法22条1項、31条、13条、14条1項に違反するか)について

 原告の憲法22条1項、31条、13条に関する適用違憲の主張は、その実質において争点1及び2の法令違憲の主張と同じであり、採用することはできない。

 また、憲法14条1項違反の主張に関して原告が指摘する昭和57年の定員増加の承認については、当該事案に固有の事情に基づいて承認がされたものと認められるから、これと事情の異なる本件申請に対し、厚生労働大臣が本件処分をしたことが、憲法14条1項に違反する不合理な差別に当たるということはできない。

4 結論

 以上の次第で、原告の請求は理由がないから、棄却する。

以上

(別紙)

あはき師法の定め

1 医師以外の者で、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゅう師免許を受けなければならない(1条)。

2(1) 免許は、学校教育法90条1項の規定により大学に入学することのできる者で、3年以上、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の認定した学校又は次の各号に掲げる者の認定した当該各号に定める養成施設において解剖学、生理学、病理学、衛生学その他あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師となるのに必要な知識及び技能を修得したものであって、厚生労働大臣の行うあん摩マッサージ指圧師国家試験、はり師国家試験又はきゅう師国家試験に合格した者に対して、厚生労働大臣が、これを与える(2条1項)。

1号 厚生労働大臣 あん摩マッサージ指圧師の養成施設、あん摩マッサージ指圧師及びはり師の養成施設、あん摩マッサージ指圧師及びきゅう師の養成施設又はあん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師の養成施設

2号 都道府県知事 はり師の養成施設、きゅう師の養成施設又ははり師及びきゅう師の養成施設

(2) 2条1項の認定を申請するには、申請書に、教育課程、生徒の定員その他文部科学省令・厚生労働省令で定める事項を記載した書類を添付して、文部科学省令・厚生労働省令の定めるところにより、これを文部科学大臣、厚生労働大臣又は養成施設の所在地の都道府県知事に提出しなければならない(2条2項)。

(3) 2条1項の学校又は養成施設の設唐者は、同条2項に規定する事項のうち教育課程、生徒の定員その他文部科学省令・厚生労働省令で定める事項を変更しようとするときは、文部科学省令・厚生労働省令の定めるところにより、あらかじめ、文部科学大臣、厚生労働大臣又は同項の都道府県知事の承認を受けなければならない(2条3項)。

3(1) 当分の間、文部科学大臣又は厚生労働大臣は、あん摩マッサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合その他の事情を勘案して、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成するものについての2条1項の認定又はその生徒の定員の増加についての同条3項の承認をしないことができる(附則19条1項)。

(2) 文部科学大臣又は厚生労働大臣は、附則19条1項の規定により認定又は承認をしない処分をしようとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない(附則19条2項)。

あはき等法19条裁判大阪地裁判決(要旨)

あはき等法19条裁判大阪地裁判決(要旨)

  令和2年2月25日 判決言渡

あはき法19条1項の規定は、晴眼者対象の学校の新設等を一定の場合に規制することで、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、視覚障害者の成型の維持が著しく困難となることを回避するという社会的政策上の積極的な目的から設けられたもの。

(同規定が設けられた)昭和39年改正の当時から現在に至るまで視覚障害者の就業率はおよそ2~3割と低水準である一方、就業している者の職種であはき師が占める割合はおよそ3~4割に及び、視覚障害者が生計を維持するための手段としてあマ指業が重要な地位を占めていることがうかがえる。同規定の立法目的は、本件処分時においても、一応の合理性を認めることができる。

 同規定の「当分の間」とは、視覚障害者に関し、あマ指師以外の適職が見いだされるか、視覚障害者に対する所得補償等の福祉対策が十分に行われることにより、視覚障害者の生計の維持をあん摩関係業務に依存する必要がなくなるまでの間をいうべきものと解すべき。

本件処分においても、視覚障害者であるあマ指師の職域を優先し、視覚障害者の生計の維持が著しく困難となることを回避するという同規定の目的に合理性が失われているということはできない。

視覚障害者以外の者であるあマ指師が急増し、その結果、視覚障害者であるあマ指師に関し、既存の職域の縮小、顧客の減少、収入の減少等が生起し、成型の維持が著しく困難になることも十分考えられる。

 同規定による法的規制措置は、視覚障害者であるあマ指師の職域を優先し、視覚障害者の生計の維持が著しく困難となることを回避する目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまるとの立法府の判断が、その裁量権の範囲を逸脱し、当該法的規制措置を著しく不合理であるということはできないから、同規定が憲法第22条第1項(職業選択の自由)に反して無効であるということもできない。

本件処分が違法であるということはできない。

(この判決要旨は、 令和2年3月12日 点字毎日第1106号から引用しました。)

あはき法等19条裁判仙台地裁判決(要旨)

 あはき法等19条裁判仙台地裁判決(要旨)
  令和2年6月8日 判決言い渡し

 あはき法19条1項の目的は、視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師(あマ指師)の職域優先を図り、生計が著しく困難とならないようにして、視覚障害者を保護する点にある。
 同項による職業選択の自由に対する制限は、同項の規制が重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることについての立法府の判断が、その裁量権の範囲を逸脱し、著しく不合理であることが明白な場合に限り、憲法22条1項に違反するものと解すべき。
 現在でも、視覚障害者の相当数は、あマ指師の業務に依存しているといえる。また、あマ指師の総数及びそのうち視覚障害者以外の者の占める割合は19条1項が制定された1964年当時に比較して大幅に増加した。
 他方、視覚障害のあはき師の年間収入は現在でも低水凖にとどまっていることからすれば、同項の立法目的は、現在においても、一応の合理性を認めることができる。
 仮に視覚障害者以外の者の養成施設の設置又は定員の増加を抑制する規定を設けない場合、その結果、過当競争による顧客の減少や施術単価の減少等を招き、視覚障害あマ指師
の生計の維持が困難になると認められ、現在においても抑制の必要性があるとする立法府の判断は著しく不合理であるとはいえない。
 上記の手段は、養成施設の設置について一種の許可制を採用するものであり、設置しようとする者の職業選択の自由を制限するものといえるが、その制限は、厚生労働大臣等が
視覚障害者あマ指師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要であると認めるときに限定され、その裁量による設置を認定することも許容している。
 また、あマ指師の資格を取得しようとする視覚障害者以外の者が既設の養成施設に入学して資格を取得することは何ら制限しておらず、その職業選択の自由に対する制限は間接的かつ限定的といえる。
 本件不認定処分がされた2016年においても、前記目的を重要な公益と認め、19条1項を必要かつ合理的な措置であるとした立法府の判断が、その裁量権の範囲を逸脱し著しく不合理であるとは認められない。


(この判決要旨は、令和2年6月25日付け点字毎日第1120号から引用しました)